一日目(5月3日日曜夜)
私自身にとって久しぶりの稽古でした。出張中はホテルに帰るのが遅く、体力維持のための体操のようなことしか出来ず。土日も仕事をしたり、パリに行ったりして、忙しく?していました。やはり、通常でない場面では稽古もままならず。ムズカシイ課題です。
3人での稽古。私自身は久しぶりでしたが、参加してくれた二人は稽古を続けてくれていたようです。一部修正もしましたが、進歩が見られる動きでした。
独習で稽古を続けることは大変なことです。
今回は、基本的な動きの確認だけで終わってしまいましたが、基本が大切です。
決して安易に考えることなく、丁寧に取り組んでください。
私は一日で筋肉痛になってしまいました。
フランスでは完全に椅子の生活。普段の私の生活は床に座っての生活で、それだけで足腰の使用頻度が異なります。そこへ武術の稽古ですから、急に足腰を酷使してしまったわけで、筋肉痛は当然のことですね。
体力維持のメニューをよく考えねば。
二日目(5月4日月曜朝)
一人で稽古。雨でした。ムシムシする暑さ。そういえばフランスでは最高気温が12℃くらいでしたので、私にとってみればいきなり夏になった気分。体調も崩しがち。
いつもは大石神影流の素振りから始めるのですが、今日は私一人なので、いきなり英信流から。ふーっと息を吐ききって、立膝で力を抜きます。
残念なことですが、出張中であったため、大石宗家の講習会に参加できませんでした。呼吸と歩法。興味があって、ぜひ参加したいと思っていたのに。
今年に入ってまだ一回も本部稽古にも講習会にも参加できていない。
勤め人の悲しさを噛みしめながら?立膝で無念無想…してませんね。
とにかく力を抜いてゆっくりと抜刀。何だか右手だけで抜刀してしまったような。
英信流表を順に抜いていきながら、細かく自分の感覚をチェック。徐々に感度が上がってきたように思います。また元にもどって一本目の横雲。おっ。今度はイイ感じ。
鞘引きが十分にでき、体を開いたような感覚です。数回、横雲と稲妻を抜きます。私の好きな技なもので。「しん」とした感覚。広い武道場に私一人が静かに刀を抜いている。
なんて贅沢な時間でしょうか。
この日は結局、これまで私が習い覚えたすべての形を復習しました。
気が付くと2時間半。あー、楽しかった。疲れたけど。
三日目(5月5日火曜朝)
二人で稽古。大石神影流を中心に。試合口、陽之表、陽之裏まで稽古しました。
私は専ら打太刀です。指導する側なので当たり前なのですが、これが実にムズカシイ。
間合をコントロールし、拍子をみる。ムズカシイですねぇ。
本部での稽古では、年齢は上でも私が末の弟子です。いつも仕太刀をさせてもらっています。存分に撃ち込ませてもらっているのですが、やりにくいと思ったことはありません。兄弟子の打ちが鋭くて、慌てたことはありますが。相手に応じて、足を進める距離、打つ拍子、受ける太刀の出し方を変えなければなりません。
打太刀も仕太刀も、相互に研究しなければ、剣の修行にならないのです。
以前、少しだけ夢想神伝流杖術を教えてもらったことがあります。夢想神伝流杖術では、仕太刀が杖で、打太刀が木刀です。(杖を持つのに仕太刀?たしか違う呼び方をしていたような)
数回の教伝でしたが、とても面白かった。形はすっかり忘れてしまいましたが、刀をよく研究しているなぁと感心したのを覚えています。そのときも最初は杖の動きばかりに目が行きましたが、学ぶうちに仕太刀の重要性に気が付きました。
中途半端な杖の動きに対しては、しっかりと対応しなければならない。具体的には、未熟な杖の動きで簡単に体勢を崩すようではいけない。しかも、杖が剣を制することが出来るように、剣の動きは理に適ったものでなければならない。
途中から私は杖よりも剣の動きばかり学んでいました。相互の研究が必須なのです。
でも、まだ私自身が仕太刀は教えらえても、打太刀は教えるレベルにありません。
もう少し私自身の研究と修行が必要です。
日々精進ですね。
四日目(5月6日水曜朝)
昨日は稽古後に妻と外出。その後、妻も交えて3人の子どもたちと市民体育館でバドミントン。疲れました。倒れるように眠り、起きると稽古の時間。
稽古を続けるのは、たとえ好きでも大変なことです。
さて、今日も一人。今日は趣向を変えて、検討してみたいテーマがありました。
『歩法と斬撃の関係』です。
長く稽古をしてきた剣道は、右足を前に左足を後ろに配し、左足踵をわずかに床から浮かして構えます。小学生のころ就いた老T先生(大戦前から剣道の指導を受けていた先生です)からは「右足を前に進めながら竹刀を振りかぶり、左足を引きつけつつ振り下ろす」と学びました。それは歩行しながらでも同じで、「右足前進=振りかぶり、左足前進=振り下し」です。しかし、実際の剣道ではほとんど振り上げ動作はなく、右足の前進で小さく振り上げ、かつ振り下しをしています。右足の接地と竹刀の打突が一致することが求められます。気剣体の一致といわれます。試合の写真などを見ると打突が右足接地より若干早いようです。
しかるに、英信流や大石神影流ではどうでしょう。
右足の接地と打突はほぼ同時か、若干右足の接地が早いように思います。
また、振りかぶりは左足前進のときに行っているように思います。(左足前のいわゆる八相からの切り付けも左足前進とみなします)
打突が完了した状態が右半身になるために、また現代剣道とは異なりしっかり振りかぶる必要があるために、「左足前進=振りかぶり」は必要不可欠です。
老T先生の指導、昨今の剣道の足さばき、英信流や大石神影流の古流の歩法と斬撃。
古流の歩法は老T先生の教えに近い気がしています。つまり戦前までは古流の歩法の影響があったということでしょうか。その老T先生は、お年を召していたこともあってか、いわゆる歩み足を多用されていた記憶があります。その時も左足前で振りかぶり、右足前で打突でした。また、いつも右半身で構えておられました。
そんなことを考えながら、わが身の動きと構えを点検する稽古を行いました。
この状態で、久しく稽古をしていない剣道をすると、自分が一体どんな動きをするのか、非常に興味がありますね。
よし。今度、稽古してみよう。
と思った次第です。
この考察はまだ続きます。